空き家問題、増え続ける日本の空き家達

リフォーム
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空き家問題は、複数ある理由から更に勢いづいて加速しています。
日本で空き家が生まれるのは、今の現状では仕方ありません。

もう他人事ではない、社会課題の1つ空き家問題の要因を説明していきます。

少子高齢化

将来推計人口によると

1950年から現在にかけて19歳以下の人口と20~64歳の人口は緩やかに減少が続き、65歳以上の人口は右肩上がりに増え続けました。

2021年から40年後の2065年にかけては

  • 19歳以下の人口は2044万人(16%)から1237万人(14%)へ
  • 20~64歳の人口は6801万人(54%)から4189万人(48%)へ
  • 65歳以上の人口は3639万人(29%)から3381万人(38%)へ

19歳以下は緩やかに減り続け、20~64歳は大幅に減少
65歳以上は一定の人数を保ちつつ、割合で考えると2021年から10%以上増加します。

2020年の日本の出生率は84万832人、前年より2万4407人減少し、5年連続で過去最小を記録
ベビーブームの世代が年金受給者に入り、少子化も進んでいる。

平均寿命が男性79.9歳、女性86.4歳は世界でも有数な長寿であり「長寿社会」とも呼ばれています。
総人口が減少していく中、65歳以上の高齢者は3617万人、割合にすると(28.4%)と過去最高となりました。(2020年9月15日推計)

介護施設の利用が増え、元々住んでた家が空き家化していっています。

優遇税制(住宅用地の特例)

住宅が建っていると不動産に「住宅用地の特例」が適用され
固定資産税と都市計画税が減額されます。

空き家を解体すると「住宅用地の特例」が適用されなくなり、税金が高くなります。
現状、制度改定がない限り特例措置は続きます。

使い道が決まってなく、更地にすると税金だけ高くなってしまうため
空き家放置問題の一つの要因になっています。

新築への優遇

日本の不動産市場に流通する8割が新築であり、欧米諸国の中古住宅流通率が7~9割と比べると
日本では圧倒的に中古住宅が流通していない。

理由は複数ある
◇税制面で新築優遇、瑕疵担保の存在
◇新築住宅を安く供給できる
◇取引内容が不透明

順に説明していこう

税制面で新築優遇

住宅は国民の住生活基盤であり、国や地方公共団体は
住生活の安定確保と、促進に必要な施策を講じています。

住宅購入にかかる税金については、中古より新築住宅が充実している。

固定資産税(固定資産評価額x1.4%)の軽減

新築:戸建て3年、マンション5年、建物分の固定資産税が半額。
新築の長期優良住宅だと戸建ては5年、マンション7年間固定資産税が半額に
中古:軽減措置なし

登録免許税の軽減

新築:建物分の固定資産評価額x0.15%
中古:建物分の固定資産評価額x0.3%
認定低炭素住宅の場合は新築・中古とも0.1%
長期優良住宅の場合は新築0.1% 中古戸建て0.2% マンション0.1%
宅建業者が中古住宅を買い取り、一定のリフォームされた住宅を個人が買い取った場合は0.1%

不動産取得税の軽減

新築:建物分の課税標準額(固定資産評価額)から1200万円が控除
中古:築年数によって控除額が減額される。
1997年4月以降に新築された物件であれば1200万控除。
1989年4月1日~1997年3月31日の間に新築された物件であれば1000万控除。

それ以降であれば控除額は450万と一気に下がり、古くなるほど段階を刻んで控除額が下がっていく。

瑕疵保険

新築の場合は「10年間の瑕疵担保責任」が法律で義務付けられています。
一方で中古住宅も瑕疵保険自体はありますが、売り主が個人の場合は なし~1年
売り主が宅建業者の場合は2年間と新築住宅より短いです。

税制面でのお得さと、中古住宅を買って欠陥があるリスクを考えると
新築と中古で値段差が大きくなければ、無難に新築を買うか・・・という判断になりがちです。

新築住宅を安く供給できる

新しく住宅を建てるには、すでに開発された地域を再開発するか
都市を拡張して新しい宅地を作るの2通りがある。

日本では都市を拡張して新しい宅地を作る施策が多く取られている。

都市計画法では開発すべき土地(市街化区域)そうでない土地(市街化調整区域)が定められている。
本来であれば、開発すべき土地で住宅地をしっかり定義し、運用されていれば
都市の再開発が促され、新築の値段は引き上がる。

実態は住宅に使うであろう可能性が低い、農地なども市街化区域に含まれ
再開発が促されず、農地を虫食い状態にすることで、新築住宅を作ることができてしまう。

少子高齢化・人口減少が進む中、虫食い状態の宅地は
インフラ・公共施設の維持管理コストを増大させ、行政サービスレベルの低下をさらに加速させます。

住みやすい街を維持するために、今後都市開発の重要性は高まっていくでしょう。

取引内容が不透明

まだまだ日本では中古住宅の流通率は2割程度と低く、不動産取り引きがブラックボックス化しています。

中古住宅流通率の高いアメリカ(8割)では、取り引きが洗練されていて
買い手と売り手に異なる不動産仲介業者がつきます。

買い手側・売り手側それぞれ有利になる交渉から、どちらか一方がごまかされる取り引きが無くなり、取り引きの透明性が高い。

代金の支払いも買い手と売り手間に仲介会社が入り、支払いトラブルが起らないようになっている。

不動産取り引きツールも充実していて、価格以外にも過去の売買履歴や修繕費用など確認でき
適正な価格か判断しやすくなっている。

住宅の総量をコントロールしていない

他国では「住宅供給目標」といった指標を持っていて、現状を踏まえ今後10年間
どの程度住宅を壊し、新築を建てるか予め決めている。
イギリスの空き家率は3~4%、ドイツ1%とやたら空き家が増えることはない。

日本では目安がいっさいなく、景気対策として住宅政策という位置づけだった。
新築数が減れば景気の足を引っ張るとして、新築が過剰に供給されてきた。

なぜ問題が解決しないのか

なぜ今のような状態になっているかというと、今が都合のいい人たちがたくさんいるからです。

政治レベルで動かないと、どうしようもない状態ですが
住宅に対する政策は優先度は低くなってしまいます。

不動産業者としても、中古物件を売ってクレームに追われるより、手離れのいい新築物件を売ったほうが都合がいいでしょう。

空き家問題自体は、今になって急に湧いたわけではなく
簡単に予測できたはずです。

根本的に解決するには中古住宅の流通が増える仕組みを整え
古い空き家を除去するハードルを下げ、都市計画の厳格化し規制を強めるべきでしょう。